2018年1月3日水曜日

投資家K.のアニュアルレポート 2017

それでも、俺は叩きのめされたよ。どうしようもないくらいね。それを言葉で説明することはできない。それはちょうど、あらゆるものを呑みこむるつぼなんだ。気が遠くなるほど美しく、そしておぞましいくらいに邪悪なんだ。
村上春樹『羊をめぐる冒険(下)』講談社文庫 *原文では「るつぼ」の個所に傍点あり。上記引用では色を変えています。
To whom it may concern.

…なんて人が、このブログの読者にいらっしゃるかどうか疑問なのですが。

2017年は、株式投資をやっている人には概ね心地よい追い風が吹いた年だったかと思います。投資家K.のリスク資産への投資の2017年の振り返りと今後の展望をまとめたいと思います。




なお当記事は、John Deere (DE)のアニュアルレポートに使用されている、あのかっこよすぎるフレーズを、まんまパクっています。バレたら私はコーン畑の肥やしにされてしまいますな。



【2017】Review 


株式投資的見地から一言で言いますと、2017年はミスター・マーケットの自我の芽生えの年と言えるのではないかと考えています。

よく引用されるジョン・テンプルトン卿の格言に
強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、幸福感のなかで消えていく。(*1)
というものがあります。

ちなみにこの格言の順序を入れ替えると、

強気見通しは幸福感のなかに生まれ(春季キャンプ)、楽観のなかで育ち(オープン戦)、懐疑のなかで成熟し(開幕戦)、悲観のなかで早々と消えていく(GWあたり)

という、1990年代後半から2000年代前半の我らがタイガースファンのペナントレース感をあらわす格言になります。

テンプルトンさんよ、ほっとけちゅーねん。

私自身の相場観は卿のようにきれいなものじゃない。私のは以下の通りです。

ミスターマーケット(以降ミスターM)は非常に働き者で、普段は我を滅して働いています。なので多くの人は彼の動向に注意を払いません。限りなく透明に近いブルーワーカーです。

ところが滅私奉公で熱心に働いた結果として、知らず知らずのうちに存在感が増してきます。周囲の人々も徐々に彼の存在を意識し始めます。

ここに至り、ミスターMに自我が芽生えます。

時がたつにつれ、どんどんミスターMが台頭してきます。彼自身ではなく、彼に追随し、愛想笑いをし、しっぽをふり、おべっかを使い、彼の威を借りて図に乗った人々によっ
英仏海峡…ではなく瀬戸内海
て、お神輿の上に担ぎ上げられるのです。


存在感が増せば増すほどミスターMはさらに多くの人を引き寄せ、呑みこんでいきます。なぜならミスターMは、その存在自体が気が遠くなるほど美しいと同時に、おぞましいほど邪悪だからです。

それだけなら楽しいのですが、お祭り騒ぎが次第に狂気じみてきて、そのさなかのある時点でミスターMの中に悪霊が入り込みます。そう、狂気に誘われてやってきた悪霊が憑依するのです。村上春樹氏の小説風にいくと、<羊>に乗っ取られた状態ですね。

やがて悪霊に取りつかれたミスターMは、狂乱する多くの人々を巻き添えにしながら崖を下って湖になだれ込み、おぼれ死にます。悪霊に入り込まれた豚の群れが、湖になだれ込んで、とん死したように(ルカによる福音書、第八章32-36)。

しかしミスターMは湖底から復活します。すでに悪霊は去り、彼はもとの素朴な青年に戻っています。湖水から這い上がり、その澄んだ目で上を見上げると、そこには一人の老紳士がにこやかに微笑みつつ(しかし眼鏡の奥の目は笑っていない)、片方の手を差し伸べて立っています。もう一方の手にはチェリー・コーク。

やあ、またやっちまったね。

こうして親切な老紳士の手を借りて、ミスターMは荒れ果てた故郷に帰還します。多くの人びとは、彼と目を会わせようとしません。一部の人達はキチジロー化し
(*2)、彼に呪詛の言葉を浴びせます。

それでもミスターMは黙々と働き始めます。そして、また・・・

つまり、無我→発芽(自我の芽生え)→台頭→憑依→狂騒→頓死・復活・帰還→無我のサイクルです。ちゃんと帰還があるところが、西洋の神話っぽいですね。どうですか、これ。文系脳まるだしで、レイ・ダリオさんも真っ青ですな。この世界観の中では、各国中央銀行は、さしずめエクソシストってとこですかね。

2017年に自我が芽生えたMは、このまま大きくなるにつれて、いつかは悪霊に入り込まれます。いつなのかはわかりませんが。既にそうなのかもしれないな・・・。

最近手に取ったウィンストン・チャーチルの『第二次世界大戦1』(佐藤亮一・訳、河出文庫)からは、台頭してくるやっかいな人気者に対しては、決しておもねることなく毅然たる態度をつらぬくことが大事、ということが読み取れます。

いまやミスターMに対して、ドーヴァー海峡を挟んで、毅然と対峙する時が来たのである!

・・・別に海峡を挟まんでもいいけど。

FEET ON THE GROUND

さて、かかるカルマを背負った状況で生き延びねばならない個人投資家は、なるべく乾いた大地の上で橋頭保を固めていかなければなりません。投資家K.は地に足をつけた投資という観点からThe 3rd Man's  Fundを旗艦ファンドとして扱っています。

期間の前半に、自身の能力と現在の投資に割くことができる時間を考慮して、重点的にフォローする銘柄を八つに絞りました(参考記事『八雲立つ -ポートフォリオの変態 その1-』と『八雲立つ -ポートフォリオの変態 その2-』)。

いろいろ御託を並べていますが、つまるところ選択基準はアニュアルレポートを読みたい銘柄、ということになります。

2017年では、配当再投資としてマコーミック(MKC)を59株獲得しました。なお、事情により2017年は配当再投資を2回行っています(参考記事『サードマンの収入明細(2017年12月)と配当再投資 -マコーミック(MKC)の追加獲得-』)が、本年以降の配当再投資は12月に年一回になります。

定期としてJMスマッカー(SJM)を32株、アルトリア(MO)を20株、臨時としてA.O.スミス(AOS)を40株獲得しました。放出した株式はありませんでした。その結果、ポートフォリオは以下の通りになっています。


オレンジ色にハイライトされているのはコア八銘柄
期間中The 3rd Man's  Fundの資産は以下の通り推移しました。




もうひとつの地に足をつけた投資として、以前に勤めていた会社(ヘルスケア、連続増配銘柄)のEmployee Stock Purchase Plan (ESPP)を通じて購入した株式があります。こちらはDripで自動的に再投資が行われるので、完全放置状態です。

2017年はDripにより17株増加しています。


EYES ON THE HORIZON

地に足をつけた一方で、人生100年時代における未曽有の高齢化・多死社会を迎える日本に住むものとしては、しっかりと未来(地平線)も見据えておかなければなりません。

未来を見据える投資のコアとして位置付ける個人型確定拠出年金では、毎月DCニッセイ外国株新デックスとEXE-i グローバル中小型株式ファンドに積み立てています(参考記事『非日常と現実との岸辺で - BOSEの獲得 -』)。2017年は一度も積み立てをSkipすることがなく無事終了しました。年末の投資信託の比率は以下の通りです。



つぎにムスメ(2.9歳)の教育資金のための作戦『汝の父を敬え』。こちらも2017年は一度も積み立てをSkipすることがなく無事終了しました。年末の投資信託の比率は以下の通りです。




最後に、来るべき日本の多死社会が生み出すマッシブな需要に的を絞って運用する日本株式のポートフォリオを『いざ・波』ファンドと命名しました(参考記事『ポートフォリオの命名 -いざ・波ー)。

2017年にはロゼッタ(6182)、アウンコンサルティング(2459)を売却、一方で新たにサンセイランディック(3277)を組み入れています。その結果年末のポートフォリオは以下の通りになっています。




また、資産の推移は以下の通りでした。



トータルのリスク資産の割合は以下の通り。




【2018】OUTLOOK


さて、ミスターMに対し毅然たる姿勢を保つ2018年のCapital allocationは以下の通りの優先順位で行きます。

収入-(生活費+娯楽費等々)= 0.投資用可処分所得
  1. 当座生活予備費
  2. 個人型確定拠出年金
  3. 汝の父を敬え作戦
  4. The 3rd Man's  Fund
  5. 『いざ・波』
  6. ESPP
今年は諸事情により、投資に振り分け可能なキャッシュがかなり削られることが予想されるので、まずはEyes on the horizonを優先させます。

なんだかんだいってもやっぱり積み立て投資+節税が基本でっせ。

あとはうちの奥さんを、なんとか個人型確定拠出年金に加入させることが大きな目標となります。まったくもう、彼女は全然こっち方面に関心がなく、現在のところ自身の給料から自分のカードで使った買い物代を引いたらあとは全額定期か普通預金です。

ちなみに家賃とか保育園代、ムスメの水泳教室、光熱費等は全部オレの負担・・・

『汝の父を敬え』作戦は、舞台を積み立てNISAに移し、40万円分目いっぱい使うため、積立額を月々33,300円に変更。なんで12で割れる金額にしなかったのかと憤慨していたところ、設定に「毎日積み立て」なるものを発見・・・まじか。

そこまでする意味が、なんかあるのか?

私はこれまでどおり毎月ムスメの生まれた日に積み立てを設定しました。

2014年に投資方針を策定してから3ヶ月に一度はかならず投資するというCadenceを守ってきたThe 3rd Man's  Fundなのですが、今年は第一、第二四半期はSkipします。とくにタイミングを計っているわけではありませんが、諸事情により。

『いざ・波』は基本的に新規でのCapital allocationはしません。銘柄入れ替えで対応します。ただ鎌倉新書(6184)と3277はオクトパスホールド(別称卍固め)の予定です。ここは中小銘柄で短期的な株価のブレはきついことが予想されます。燃える闘魂でホールドだ。

ESPPも放置。DRIPにて自給自足。

こうやってみると、ミスターMに対峙するとか言いながら、ミスターMに連動する投資信託への積み立てが最優先やんけ・・・

いいのです。たとえそうであっても毅然とした心構えは大事なのである!

というところで、・・・語るに落ちて苦しくなってしまったので、もうおしまい。


情報開示:面倒くさいのでSkip

(*1) Ronald W.Chan 『価値の探求者たち』山本御稔・小林真知子・訳、(きんざい)から引用。
(*2) キチジローは遠藤周作著の『沈黙』の登場人物。

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