2017年8月20日日曜日

中国行きのスローボート、米国の急騰…じゃなかった給湯銘柄A.O.スミス(AOS)

「十二時」とおじさんは言う。「十二時にはちゃんと出るって」
 どうだか、と僕は思う。どうだか、とドイツ人も思っているみたいだった。ギリシャ人が夜中の十二時まで仕事なんかするものか。
 翌朝起きてみても思った通りお湯は出なかった。

村上春樹『遠い太鼓』講談社文庫

"なにしろ我々はもう三週間くらいまともなバスタブにつかっていない”村上夫妻が、あらかじめまともなバスタブのあるホテルを予約して訪れたところ、工事中でお湯が出なかったというエピソードです。そりゃ、がっかりですね。1987年のクレタ島はアギヤ・ガリーニでのことです。

一日の終りに熱い湯がでないってのはこたえますね。冬の寒い朝にお湯が出ないのも相当きついだろうな。ま、なんせね、自慢じゃないが実家は私が中学になるまで五右衛門風呂だったのでね・・・ありゃたいへんだったぜ。オレは週二回湯沸かしの当番だった。かまどに薪をくべるんですぜ。調子こいていると上が地獄谷状態になっちまったりしたもんだ。

さて先日『八雲立つ -ポートフォリオの変態 その2-』で書いたように、住宅・商業施設向け温水装置を提供するA.O.スミス(AOS)を獲得しました。もはやこのIOTのご時世、ごくごく一部の人を除けば、毎日湯沸かしの為にかまどに薪をくべなければならぬ住居に住みたいなどとは思いません。

ではAOSをレビューします。

まずはRevenueの推移。


数値のソースはモーニングスターのサイト
前回の金融危機後にぐっとトップラインが下がっていますが、その後は順調に回復してきています。不動産がらみのクライシス時に、こういうど真ん中銘柄を獲得する胆力と眼力(つぶれるか否かの見極め)があればなあ、とは思うのですが、今後もそんなことができる自信はありません。

で、トップラインの回復はわかるのですが、なにゆえOperating Marginが良くなっているかまでは把握していません。ま、いいことではありますが。

2017年度は8-9.5%のトップラインの成長を見込んでいます。

セグメントは北米とその他地域に分かれています。二つのセグメントのSalesの推移は以下の通り。


数値は10Kレポートより、$K

【北米】

Water Heatersをおもに住宅、レストラン、ホテル・モーテル、オフィス、ランドリーやカーウォッシュ・サービス等に、またボイラーを学校や病院、ホテル、その他もろもろの商業施設に提供。

ちょっと驚きなのは、これらの製品を小売りのLowe'sで販売しているとのこと。いや、まあ、あっちのホームセンターはほんとに家一つ建てるのに必要なものはすべて売っておりますからね。また実際に自力で家を建てる人が結構いるんですわ。

マーケットシェアは北米一位、売上の大部分が交換需要だとか(下図参照)。そうですね、交換するのがイヤなら薪わりから始めないといけませんものね。


AOSのSpring 2017 Analyst Presentationより
個人的には米国の人口動態やライフスタイルの変化を鑑みて、New Constructionも今後ぐっと伸びてくるのでは・・・と考えています。

また浄水器も扱い始めたようです。クロロックス(CLX)の扱うBritaは競合ですね。

【その他地域】

FY16のSalesの約35%。

前出のグラフでわかるとおり、目覚ましく伸びています。このセグメントは中国とインドでRevenueの約94%を占めています。為替の影響を除くと16年度の中国は18.9%成長だとか。

その中国市場では20年以上ビジネスをやっておるそうです。


中国でのマーケットシェア推移、AOSのSpring 2017 Analyst Presentationより
リンナイ、ノーリツ等の日本人のお馴染みを押さえてトップです。オムツでは花王や大王製紙かもしれんが、こっちではAOSじゃ。2002年から2006年ころまで右肩上がりで、2009年あたりからまた伸びているけど・・・おぼろげな記憶だと、金融危機で世界中がコケたとき、中国がせっせといろんな政策をとって経済回復につとめてたなあ。

AOSはそれにうまく乗っかった可能がある。

逆に今後はこれまでの中国の無理がたたって一緒にコケるリスクはある。がんばれ習近平国家主席! 貴殿のことは成毛眞さんも非常に褒めておったぞ(『理系脳で考える』朝日新聞出版)。というわけで最近は中国関連のニュースにもせっせと目を通すようになった。まあ、株式投資というのは他国にポジティブな眼差しをそそぐのに役立ちますね。

でも、かの国のシン・ダイトーリョーはなあ・・・・

財務3表(数値のソースは10Kレポートより、P/Lは多少つじつま合わせをしています) 




純利益の利回りは12%。

今回財務諸表を見ていて(おそらく)初めて見かけたのですが、Marketable Securitiesという項目が流動性資産にありました。親愛なる日本語だと市場性証券なるもので、なにやらAOSのアニュアルレポートの説明によると中国の銀行に預けてある180日から一年満期の預金のようです。流動性資産の約1/3です。

Cash Flowの投資キャッシュフローの多くを、このInvestment in Marketable Securitiesが占めています。

てなわけで、キャッシュフローを別の視点から見ても、あんまりCapexは大きくない。


数値のソースはモーニングスターのイト

2016年8月に浄水器のAquasana Inc.を買収しています。水回りを固めていますね。大事です。

また2016年に南京に製造施設の建設着手しているのををはじめ、中国にある程度Capexがかかっています。Go, 習近平国家主席!

というわけで、基本的には米国の堅調な(と思う)住宅事情にのっかるつもりでAOSを獲得したのですが、なぜか不思議なことに中国愛が芽生えつつあります。まあ、いいんじゃないですか。

これからある程度の期間を置きながらのんびり獲得していきたいとは思いますが・・・いざ先の金融危機のような調整が訪れたら、まあ、こわくて手が出せんでしょうね。

まっとうな小市民の投資家は、平時にコツコツ投資、有事の際は震えて布団にくるまる・・・というのがあるべき?姿かもしれません。投資家に告ぐ、今夜は震えて眠れ、なんてね。

GO! 習近平国家主席!

情報開示:この記事を書いている時点でAOS40株、CLX24株保有


Appendix


10Kより

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